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我らがエース、アツタのメモリー。


監督は、酒を飲むのはそんなに得意ではないが、


呑まれるのは超得意である。

しかし問題は、呑まれた記憶を、失えないことだ。
次の日の後悔たるや、いつも絶望的。二日酔いの絶望感は、
単なるアルコール代謝の化学反応だとわかっては
いるのだが、それにもまして、おれがした、あんなことやこんなこと。。。
ああ、記憶さえ失ってしまえれば、どんなに幸せなことか。


さて、妄想チーム;レーシングフィーバーのエースこと
アツタミネト。プロテクターをしない男である。

ムカッ! いつでもケガナイチンチを潔しとする監督は、
アツタに幾度も「プロテクターしろよ!」と勧告するが
そのたびに、
「XXX・XXXXXXを知らないんですか?」
とか監督がよく知らない外国のライダーの名前を出し
「プロテクターすると、遅くなるですよ」
とわかったようなことを言いやがる。


先日の全日本選手権でも、監督の再三の勧告にもかかわらず、
プロテクターをせず、Tシャツジーンズという、
レーシングフィーバーの正装ならぬ民族衣装で
レースに挑んだアツタ。してその結果は。


これこのあと絶対転けるよね。


ということで、アツタ、転倒。


起き上がって、それでもゴールラインを切る。
まあ、仕方がない。それもレースである。

ここからが、我らがエース、アツタの本領発揮となった。

毒舌で知られるチーム員;ユウキが、
「アツタくん、なんか転けて記憶飛ばしちゃったみたいだよ」
と、教えてくれていたので、最初は余り驚かなかった。

     *

「あれ? 今日おれ、ナニしてるの?」
今日、君は全日本に出たんだよ。

「え? じゃあ結果は?」
君は予選で転んだんだよ。

「どこで?」
コース途中のビッグドロップで。

「なにそれ、そんなもの富士見にはないでしょ」
あるんだよ。今回特設されたんだよ。

「で、オレ完走したんですか?」
ああ、だから今ここにいるんじゃん。

「やった! でも全然記憶ない! 詐欺だ!
 エントリーフィー返せ!」

 というやりとりから始まり、
 また3分後には、*印から全く同じやりとりと
 同じリアクションを繰り返す。



 200回目ぐらいのルーティーンになって、ようやく
 自分が記憶を飛ばしているということを微妙に認識したらしく

「あの、さっきもたぶん同じことを聞いたと思うけど、
  今日は、ナニしてるんだっけ?」とおずおずと聞くようになった。

加えて、
「ラグビーやってたときに、記憶飛ばすなんて、よくあったから大丈夫」
とまでいうようになってきた。

 じゃあ、大丈夫かと思いきや、
「あれ、いまどこに向かってるんだっけ?」と
 さっき風呂に向けて出発したことすら忘れている。



我らがエース、アツタは、いま、この瞬間を
 この瞬間だけを、生きている。

 ちょっと感動した。いつも昔の失敗や
  昨日呑まれたことを思い出してぐずぐずしがちなオレなんか、
   実はそうとう、うらやましくもなった。



 しかし超メンドくさいのは確かだ。
 どうせ同じ質問しかしないので、答えを油性マジックで
  腕にでも書いとけと思った。タトゥで入れちまえとも思った。
  映画『メメント』実写版だ。

 そして夜。アツタはまた同じ質問を繰り返す。
 「あれ、なんでモモとヒジが痛いんだ? おれ、転けた?」
 ああ、転けたよ。

 「なんでプロテクターしてないの? オレ持ってきてない?」
 君がプロテクターは嫌だっていうから。

 「なんで! それは監督の監督不行き届きだ! だからおれ転けた!」

 むかーーー! 夜のお酒に呑まれつつあった監督、
 刻むぜ怒りのビート! 燃え尽きるほどヒート!

 『ユー! リッスナップ!』

 ここで突然、深夜の公式ミーティング開始!

  もう何を言ったか、監督の記憶も珍しくあいまいであるが、
 『プロテクターはドゥ! メモリーロストはドント!』
 のセリフだけは、覚えている。あと、

  どうせこいつは明日、今、監督がこうやって
  深夜のミーティングしたことも、すっかり忘れてるんだろうな、
   と思うとますます腹が立って、
    『ユー! スリープ タイト! グッドナイト!』
    と怒鳴ってどっかに消えてしまったことも覚えている。



 そして案の定、アツタはこれっぽっちも監督のミーティングを覚えていない。

  が、それでも生きているようなので、ちょっと安心している。

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