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また後ろを走りたいライダー

独立自尊の教育を受けてきたためか、既存の仕組みと折り合いの付きにくい生き方で損ばかりしている。ただ、山を走るとなると話は別で、これはもう、圧倒的に誰かの後ろを走るのが大好きだ。トレールの基本ラインと推奨速度を読み選ぶ、という作業が減るため、自分なりのラインを探す余裕ができるからである。

もうひとつ、人の後ろを走ると楽しいことがある。前を走ってるライダーの走りを、思いきり堪能できることだ。速くてもダサいやつ、遅くてもスタイリッシュなやつ、選ぶラインが美しいひと、地形は関係なく、自分のラインを押し通すのが好きなひと。ライダーの数だけスタイルがあり、そのスタイルはオフロードという過酷な状況においては、その走りにおける本質的な部分が強調されて現れる。

いい走りをする人の後ろを走ると、それだけで楽しい。自分には思いもよらなかったようなライン選びや身のこなしは、とても勉強になり、同時にそのヒラメキ感が、ライディングをよりハッピーにしてくれる。だから山では、人の後ろを走るのが、大好きだ。

なかでも、次に上げる3人の後ろは、またいつでも機会があれば走りたい。

柳原康弘
この人の走りは、むちゃくちゃクリエイティブである。想像もしなかったラインを走り、テクニカルな登りを無駄なく美しく走り抜け、そんなところでサブロク=360度ターンするの! みたいな。技術的に世界一だったこともある(20年以上前にトライアル競技で世界一になったことあり)ので当たり前だが、この人の後ろの魅力は技術ではない。その創造力である。一瞬の想像を、走りとして具現化してしまう創造力。この人は、走りの表現者だ。また後ろを走らせて。

大竹雅一
むかしドリフト、いまスキッドと呼ばれる後輪滑らせだが、その後輪滑らせコーナリングが、世界的に「オオタケ・コーナリングと呼ばれていたことがあった。そのオオタケさんだ。ウィキなんかには載ってない事実である(たぶん)。
しかし、この人の楽しさは、オオタケコーナーではない。走りの渋さである。決して派手ではなく、ひたすらに山走りを愛し、慈しみ、そして楽しんでいるのが伝わってくるその後ろ姿は、ただただ渋いっすねーの一言に尽きる。注目は、後輪のライン、そして挙動だ。あるときはナメるように、またあるときは利用するように、地形で加速し、跳ね、減速する。いまとなっては、オオタケさんによるオオタケコーナーなんてほとんど見ることはないはずだが、反対に山ライディングにおけるひとつの完成形を拝むことができる。誉めすぎか。

辻義人
日本から一番近いマウンテンバイク天国といえば、カナダ・ブリティッシュコロンビア州であるが、その本拠地とも言えるバンクーバーにて、日本と天国との架け橋となっているのが、NHK公認『ファースト・ジャパニーズ』である辻くんだ。《ロデオサーカス》という、マウンテンバイクうひうひツアーを率いる彼の後ろを走るのは、いつも楽しく頼もしい。自分の後ろを必ず誰かがついてきていることを意識し、安全で、しかも後ろのライダーの力量を高めてくれるラインを選ぶ。連れていってくれるトレールの質自体も高いのだが、彼の後ろを走ることで、今のマウンテンバイクの世界スタンダードというものを、走りという視点で体感できる。しかしそれは、昨今の過激派マウンテンバイクビデオに見るそれではない。むしろ柳原やオオタケさんに通ずる、マウンテンバイクならではの乗り方、ラインの選び方となる。彼の後ろを走る前と走った後とでは、ラインの選び方を始めとする乗り方、楽しみ方は変わっているはずである。
あともうひとつ、個人的には、辻くんの走る最中の腰の動きがセクシーであるのが、後を走って楽しい理由のひとつ。ヤラシーじゃないぜ。この違いがわからんやつとは話したくない。


モンキー小猿こと、今泉 仁(ヒロと読む)の後ろもそうとう楽しいな。このマウンテンバイクの天才風雲児については、またの機会にじっくりと。

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