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見学だけのつもりが

 フィンランドでは、老若男女もなすオリエンテーリング。子どももおばあちゃんも、楽しそうに森の中に消えていきます。


 おばあちゃんもやってるのかー。おばあちゃんがー。おお。おおおおお。おおおおおおおおれもやる!

 なにせバカなので、いま目の前にある楽しそうなものを、ただ見てるだけというのができません。そのときは短パン&Tシャツだったのですが、たまたまクルマに雨具がある。そいつを着て財布から4ユーロを取り出し「おれもやりたいけど」と、受付の人に申し出ました。

 と、そのとき汗をダクダクにかいた友人が戻ってきました。「一番短いコースだと、どれぐらいかかるだろう?」「40分ぐらいじゃないか?」「おれさ、やるから。やるから。1時間ぐらい待っててよ」

 と言い残し、受付でタグをもらい、スタートでピッとやって、一人森の中へとごーごごー!


 で、森の中。目印みたいなものは、なんにもありません。方角の書いていない地図を、地形をだけを頼りに「たぶんこっちが北だろう」と信じ、チェックポイントのあるであろう場所へと向かいます。そうそう、地図上で引いた、チェックポイントを結ぶ直線なんて、なんの役にも立ちません。そこには倒木があり、湿地があり、自分の向いている方向は刻一刻と変化するので、もうコンパスと自分の心以外に、頼れるものはないのです。



 森の中、深く踏み入っていきます。前の人が走った後なんてないし、たった一人だし、なんか違った方角に向かってるし、初心者コースのはずだし、そのへんでガサガサいってるし、あっちの空がなんか暗いなと思ったら、ゴロゴロとか雷聞こえるし、携帯電話とかないし、お化けとかいないし、もうギブアップとかいっても誰もいないし、チェックポイントこの辺のはずなんだけどないし、もうどうしよう。

 と泣きそうになったそのとき、第一チェックポイント発見。ほっとして、やっぱり泣きそうになる。


 んがしかし、男の子なので、次のチェックポイントに向かいます。チェックポイントは、自分の正確な場所が分かる大切な目印。ここを元に、地図のどっちが北なのかを、地形を読みながら心に刻む。あっちだ! と向かう先にあるのは、さらに深い森。んがー。

 そのさらに深い森に入ります。小さな川を飛び越えて、手つかずの自然の残る、原始の世界へと。



 もうー。こっから先はあれです。泣きそうーポイントあって泣きそうーまた泣きそうを繰り返しつつ先に進みます。そして、いくら探しても見つからないチェックポイントのあたりで、往生しました。でかい蜂(だとおもう)がブーンとか威嚇して来るし、


その辺になんかのうんこがあって、やっぱりいるのかー、とか思う。

大きな岩があってその上に立って、ガオーとか吠えて空元気だしてみるものの、あたりはうっそうとした森。暗いし寂しいし、もう方角もどっちかわかんなくなるし、ヘンゼルとグレーテルの気持ちがよくわかる。お菓子の家でも見つかんないかしら。


 とか、もやもやしてたらついにやっぱり雨が降りだした。ごろごろごろー。

 時刻はすでにスタートから1時間半以上経過。実はこの辺りになると、自分の中の野生が目覚めたのか、結構落ち着いて地図読みしながら自分の位置を確認しながら歩いてましたが、ここで、もうおしまい、と超決定。ギブアップして戻ることにしました。いわゆる勇気ある撤退というやつ。

 いつもその決断が早過ぎやしないか、という疑問も同時にわきますが、手遅れになる前に手を打つのに超したことはない、との言い訳も常に用意されてます。

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