『ステムの長さは、どのように自転車のステアリングとハンドリングに影響するのだろう?』
という記事があった。これだ。
by Matt Wikstrom
http://cyclingtips.com/2015/03/how-does-stem-length-affect-a-bikes-steering-and-handling/
2015年3月30日に公開されたこの記事には、以下のようなことが書かれていました。ご参考までに。
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現在、スポーツ自転車の市場には、多くの長さと角度を提供するステムが用意されている。乗り手のハンドルバーへのリーチの好みに幅広く、そして柔軟に対応するものだ。ただこの快適さと有効性だけで物事を捉えるわけにはいかない。マット・ウィクストロムが、ロードバイクにおけるステム長とステアリング/ハンドリングとの関係性に、深く踏み込んでいく。
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スポーツバイクの安全性を高めるという意味で、ハンドルバーとステムはポジション調整の重要なポイントだ。ただ、ずいぶん前にあった、長さが調整可能なステムというのは、すでに過去のものとなっている。
この調整可能なステムを発明したのは、19世紀末、マーシャル『メジャー』テイラー(http://en.wikipedia.org/wiki/Marshall_Taylor)であると言われている。これは前後にスライドするステムによって、その突き出しを調整するというもので、ハンドルはライダーに合わせて調整できた。テイラーはこのステムを使い、幾つもの勝利を挙げ、その実用性を証明してきた。
このテイラーの発明は、それまで一定の長さに決まっていたステムデザインに疑問を投げかけ、それ以来ライダーは、ステムの長さを変えることで、自分に最適なハンドル位置を決めてきた。現在、その選択肢は大幅に増え、50mmから150mmにもなる長さと細かな角度のものが用意され、ライダーごとのファインチューニングに欠かせないものとなっている。
カスタム フレームビルダーは、このステム長の問題に関する、ベストな情報源であると言えよう。つまるところ彼らは、注文された人それぞれに理想的なフィットを提供するフレームを造るというビジネスを行っており、最適なステム長を探り出すのは、そのプロセスの一つであるからだ。
Jaegher in Belgium(http://www.jaegher.com/)のスティーブン・イェーガーにこの質問を投げかけると、彼は こう言った。「もっともいいハンドリングができるよう、フレームサイズとの関係性において最良のバランスであるよう、一定の範囲で決めている。フレームサイズが合わないからといって、ステム長で調整するのは、いいアイディアであるとは絶対に言えない」
イギリスを拠点とするCraddock Cycles (http://www.craddockcycles.co.uk/)のリチャード・クラドックも、同じようなことを言っている。「一般的なベストバランスとしては、中程度の長さのステムになると思う。もちろん、その具体的な長さは人それぞれによるし、そのフレームのトップチューブ長が、中程度のステムにぴったりのものであることが前提だけれども」
アメリカ、 Spectrum Cycles(http://www.spectrum-cycles.com/)のトム・ケロッグは、ライダーのリーチを決定するもっとも大切な要素は『コクピット長』であるという。
「結局ライダーの身長ではなく、大切なのはコクピット長です。コクピット長の長いライダーは、長いステムとハンドルバーリーチのコンビが必要になるはずです」とケロッグは言う。「さらに攻めた走りを求めるバイクならば、長めのステムが必要です。これはすべて、前輪に多くの重心をかけるためのものになります」。
バイクがどのように使われるのか、その目的を明確にすることの大切さは、 Baum Cycles(http://baumcycles.com/)のライアン・ムーディも述べている。「ステム長は、バイクごとに変わってきます。それに加えて、ライダーの心地よさ、体の部位ごとのサイズ、必要となる出力、さらにはステアリングとハンドリング性能に関わってきます。ベストなステム長を決めるためには、ライダーがそのうちのどこに重きをおくのか、が重要です。例えば快適さを求めれば、ベストなパフォーマンス(出力)を達成できる理想のポジションは犠牲となるからです」
結局、ステム長を決定するには、方程式のようなものはないというのが結論だ。しかしそれでも、すべてのライダーに関わってくる、認識しておきたい事柄が、2つある。
物事を簡単にするために、こう考えてみよう。フレームの前三角が伸び縮みして、ステムの長さが変わったとしてもハンドルへのリーチが変わらないバイクがあるとする。この設定だと、ステムの長さは、前輪にどれだけ重量がかかるのかを決定するものとなる。
「ステムが長いほど」とトムは説明する。「ハンドルバーに押し付けられるライダーの体重は、前輪を前に向けるために使われる力となります」。結果としてバイクは、特に高速で安定して走るようになり、それがプロライダーが短いトップチューブに長いステムを使うという理由の一つとなる。この安定性は、リムハイト(リム高)の高い、ハイプロフィールデザインのホイールを、風の強い日に使う時にも大変有効なものとなる。
さらに気にしておきたいのが、走行時にライダーの重みがどこにかかるのか、ということである。下の図を見てみよう。
理想的には、ライダーからの重みは、前輪と路面との設置点に近ければ近いほどよい。「短いステムと長いトップチューブの組み合わせは、前輪の操作感を軽めに感じさせるはず」とリチャード・クラドック。ライアン・ムーディもこれに同意し「前輪の路面設置点よりも後ろに重みがかかると、ハンドリングは『ぼやけ』てしまいます。まあこれは設置点の前側にかかり過ぎても、同じ結果となるのですが」
もう一つの判断材料としたいのが、ステアリング角、すなわちハンドルを切った時に、どれだけの量が動くことになるのか、ということである。下の図を参照してほしい。
トム・ケロッグは、こう説明する。「短いステムは前輪と同じような動きになるのですが、長めのステムだと船の方向舵のような感覚になりますね」。ライアン・ムーディは、これを入力と出力との比率であると考える。「短めのステムはより素早い反応を得られますが、それはすなわち体の動きがそのまま伝わるということにもなり、不安定さを感じることにもつながります」
リチャード・クラドックは、ステム長に対してとても慎重だ。「とても長いステムと短いトップチューブの組み合わせは、ハンドリングの反応を遅くします。ライダーの手の位置がステアリング軸よりも相当前にある場合、低速での操作性に影響を及ぼすこともあるでしょう」
極論を言えば、バイクの操舵感覚は、そのヘッド角とトレール量(http://cyclingtips.com.au/2011/02/the-geometry-of-bike-handling/ これも面白そうだからそのうち訳してみよう)で決まるもの。ステムの長さが決めるものではない。ただステム長はその特性を強めたり、弱めたりすることには一役買っている。つまり、短いステムはバイクの特性をクイックかつ不安定にし、長めのステムはそれを抑えるという特性がある。逆の視点から見れば、長いステムは、快適さを求めて寝かされた(ヘッド角の小さな)フレーム特性を、さらに遅くしてしまうという影響を及ぼすわけだ。
ライアン・ムーディと話している時に、彼はステム長を決める時の特殊な例をあげてくれた。「女性の場合、上半身は男性に比べて短いことが多いので、短めのステムが必要となることがあります。短い上半身は、前輪にかかる重みを少なくする傾向がありますからね。私たちビルダーは、フレームのトップチューブを短くすることはできますが、短くしすぎると、前輪がペダリングするつま先に当たってしまうことがあります。前輪が体の下のどの位置にあるべきかというのを決めるのは、とても重要な要素になるのです」
リチャード・クラドックも、同じ考えを持っている。「ヘッド角を寝かせることで前輪がつま先に当たらないようにしているブランドもいくつかあります。でもこれはトレール量を大きく増やしてしまい、その結果、もたつきがちでおかしなハンドリングとなりがちです。しかもこれに合わせたフォークのオフセットを用意していないことが多いのです。そのため、適切なヘッド角と最良のハンドリングのためには、短めのステムのためにフレームをデザインする方が、よっぽどいい」
多くの状況において、ライダーはステム長を自由に選び、ファイン・チューニングする機会に恵まれることはない。この現状には抗えないが、それでもフレームサイズを選ぶ時には、そして異なるジオメトリー同士のフレームを比べる時には、最終的にそれぞれのジオメトリーに必要となるステムサイズを考慮するのが良い。
理想的には、ステム長は、前輪に確実にライダーの自重をかけられるぐらいの長さがあり、バイクの操舵性を安定させ、路面との確かなグリップ力を得られるのがベストだ。そして同時に、ヘッド角とトレール量による特性を乱さない長さであることが望ましい。
これだけでは、的確な助言をするには言葉足りないかもしれないが、こういうことになる。長めのステムは、ロードバイクには適している。というのもライダーは一般に高いスピードで走るため、より安定したステアリングの利点を大きく受けることになる。この場合の長め、を数字にすると、だいたい100〜120mmとなる。さらに長い数字、となると130mm以上となるだろうか。そして90mm以下のステムは、短いステムであると考えていいだろう。
スポーツバイク全体として考えると、ステム長がバイクの走りに及ぼす影響というのは小さなものだ。ほとんどのライダーは、そのステム長が自分のリーチの範囲にある限り、それに簡単に順応してしまうからだ。しかしながらステム長は、ライダーの求めるハンドリングとステアリングを確かに(あるいは完璧に)調整できるものであると言って、全く差し支えないのは事実である。
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なるほどねー。難しいマターなんだねー。
という記事があった。これだ。
"How does stem length affect a bike’s steering and handling?"
by Matt Wikstrom
http://cyclingtips.com/2015/03/how-does-stem-length-affect-a-bikes-steering-and-handling/
2015年3月30日に公開されたこの記事には、以下のようなことが書かれていました。ご参考までに。
===============
『ステム長さは、自転車のステアリングとハンドリングへ、どのように影響するのだろう?』
現在、スポーツ自転車の市場には、多くの長さと角度を提供するステムが用意されている。乗り手のハンドルバーへのリーチの好みに幅広く、そして柔軟に対応するものだ。ただこの快適さと有効性だけで物事を捉えるわけにはいかない。マット・ウィクストロムが、ロードバイクにおけるステム長とステアリング/ハンドリングとの関係性に、深く踏み込んでいく。
--------
スポーツバイクの安全性を高めるという意味で、ハンドルバーとステムはポジション調整の重要なポイントだ。ただ、ずいぶん前にあった、長さが調整可能なステムというのは、すでに過去のものとなっている。
この調整可能なステムを発明したのは、19世紀末、マーシャル『メジャー』テイラー(http://en.wikipedia.org/wiki/Marshall_Taylor)であると言われている。これは前後にスライドするステムによって、その突き出しを調整するというもので、ハンドルはライダーに合わせて調整できた。テイラーはこのステムを使い、幾つもの勝利を挙げ、その実用性を証明してきた。
このテイラーの発明は、それまで一定の長さに決まっていたステムデザインに疑問を投げかけ、それ以来ライダーは、ステムの長さを変えることで、自分に最適なハンドル位置を決めてきた。現在、その選択肢は大幅に増え、50mmから150mmにもなる長さと細かな角度のものが用意され、ライダーごとのファインチューニングに欠かせないものとなっている。
『簡単な方程式はない』
カスタム フレームビルダーは、このステム長の問題に関する、ベストな情報源であると言えよう。つまるところ彼らは、注文された人それぞれに理想的なフィットを提供するフレームを造るというビジネスを行っており、最適なステム長を探り出すのは、そのプロセスの一つであるからだ。
Jaegher in Belgium(http://www.jaegher.com/)のスティーブン・イェーガーにこの質問を投げかけると、彼は こう言った。「もっともいいハンドリングができるよう、フレームサイズとの関係性において最良のバランスであるよう、一定の範囲で決めている。フレームサイズが合わないからといって、ステム長で調整するのは、いいアイディアであるとは絶対に言えない」
イギリスを拠点とするCraddock Cycles (http://www.craddockcycles.co.uk/)のリチャード・クラドックも、同じようなことを言っている。「一般的なベストバランスとしては、中程度の長さのステムになると思う。もちろん、その具体的な長さは人それぞれによるし、そのフレームのトップチューブ長が、中程度のステムにぴったりのものであることが前提だけれども」
アメリカ、 Spectrum Cycles(http://www.spectrum-cycles.com/)のトム・ケロッグは、ライダーのリーチを決定するもっとも大切な要素は『コクピット長』であるという。
「結局ライダーの身長ではなく、大切なのはコクピット長です。コクピット長の長いライダーは、長いステムとハンドルバーリーチのコンビが必要になるはずです」とケロッグは言う。「さらに攻めた走りを求めるバイクならば、長めのステムが必要です。これはすべて、前輪に多くの重心をかけるためのものになります」。
バイクがどのように使われるのか、その目的を明確にすることの大切さは、 Baum Cycles(http://baumcycles.com/)のライアン・ムーディも述べている。「ステム長は、バイクごとに変わってきます。それに加えて、ライダーの心地よさ、体の部位ごとのサイズ、必要となる出力、さらにはステアリングとハンドリング性能に関わってきます。ベストなステム長を決めるためには、ライダーがそのうちのどこに重きをおくのか、が重要です。例えば快適さを求めれば、ベストなパフォーマンス(出力)を達成できる理想のポジションは犠牲となるからです」
結局、ステム長を決定するには、方程式のようなものはないというのが結論だ。しかしそれでも、すべてのライダーに関わってくる、認識しておきたい事柄が、2つある。
『重量配分』
物事を簡単にするために、こう考えてみよう。フレームの前三角が伸び縮みして、ステムの長さが変わったとしてもハンドルへのリーチが変わらないバイクがあるとする。この設定だと、ステムの長さは、前輪にどれだけ重量がかかるのかを決定するものとなる。
「ステムが長いほど」とトムは説明する。「ハンドルバーに押し付けられるライダーの体重は、前輪を前に向けるために使われる力となります」。結果としてバイクは、特に高速で安定して走るようになり、それがプロライダーが短いトップチューブに長いステムを使うという理由の一つとなる。この安定性は、リムハイト(リム高)の高い、ハイプロフィールデザインのホイールを、風の強い日に使う時にも大変有効なものとなる。
さらに気にしておきたいのが、走行時にライダーの重みがどこにかかるのか、ということである。下の図を見てみよう。
https://cdn-ctstaging.pressidium.com/wp-content/uploads/2020/12/Weight-Fig.jpg |
理想的には、ライダーからの重みは、前輪と路面との設置点に近ければ近いほどよい。「短いステムと長いトップチューブの組み合わせは、前輪の操作感を軽めに感じさせるはず」とリチャード・クラドック。ライアン・ムーディもこれに同意し「前輪の路面設置点よりも後ろに重みがかかると、ハンドリングは『ぼやけ』てしまいます。まあこれは設置点の前側にかかり過ぎても、同じ結果となるのですが」
『ステアリング角』
もう一つの判断材料としたいのが、ステアリング角、すなわちハンドルを切った時に、どれだけの量が動くことになるのか、ということである。下の図を参照してほしい。
https://cdn-ctstaging.pressidium.com/wp-content/uploads/2020/12/Arc-Fig.jpg |
トム・ケロッグは、こう説明する。「短いステムは前輪と同じような動きになるのですが、長めのステムだと船の方向舵のような感覚になりますね」。ライアン・ムーディは、これを入力と出力との比率であると考える。「短めのステムはより素早い反応を得られますが、それはすなわち体の動きがそのまま伝わるということにもなり、不安定さを感じることにもつながります」
リチャード・クラドックは、ステム長に対してとても慎重だ。「とても長いステムと短いトップチューブの組み合わせは、ハンドリングの反応を遅くします。ライダーの手の位置がステアリング軸よりも相当前にある場合、低速での操作性に影響を及ぼすこともあるでしょう」
極論を言えば、バイクの操舵感覚は、そのヘッド角とトレール量(http://cyclingtips.com.au/2011/02/the-geometry-of-bike-handling/ これも面白そうだからそのうち訳してみよう)で決まるもの。ステムの長さが決めるものではない。ただステム長はその特性を強めたり、弱めたりすることには一役買っている。つまり、短いステムはバイクの特性をクイックかつ不安定にし、長めのステムはそれを抑えるという特性がある。逆の視点から見れば、長いステムは、快適さを求めて寝かされた(ヘッド角の小さな)フレーム特性を、さらに遅くしてしまうという影響を及ぼすわけだ。
『女性向けのステム長』
ライアン・ムーディと話している時に、彼はステム長を決める時の特殊な例をあげてくれた。「女性の場合、上半身は男性に比べて短いことが多いので、短めのステムが必要となることがあります。短い上半身は、前輪にかかる重みを少なくする傾向がありますからね。私たちビルダーは、フレームのトップチューブを短くすることはできますが、短くしすぎると、前輪がペダリングするつま先に当たってしまうことがあります。前輪が体の下のどの位置にあるべきかというのを決めるのは、とても重要な要素になるのです」
リチャード・クラドックも、同じ考えを持っている。「ヘッド角を寝かせることで前輪がつま先に当たらないようにしているブランドもいくつかあります。でもこれはトレール量を大きく増やしてしまい、その結果、もたつきがちでおかしなハンドリングとなりがちです。しかもこれに合わせたフォークのオフセットを用意していないことが多いのです。そのため、適切なヘッド角と最良のハンドリングのためには、短めのステムのためにフレームをデザインする方が、よっぽどいい」
『まとめと結論』
多くの状況において、ライダーはステム長を自由に選び、ファイン・チューニングする機会に恵まれることはない。この現状には抗えないが、それでもフレームサイズを選ぶ時には、そして異なるジオメトリー同士のフレームを比べる時には、最終的にそれぞれのジオメトリーに必要となるステムサイズを考慮するのが良い。
理想的には、ステム長は、前輪に確実にライダーの自重をかけられるぐらいの長さがあり、バイクの操舵性を安定させ、路面との確かなグリップ力を得られるのがベストだ。そして同時に、ヘッド角とトレール量による特性を乱さない長さであることが望ましい。
これだけでは、的確な助言をするには言葉足りないかもしれないが、こういうことになる。長めのステムは、ロードバイクには適している。というのもライダーは一般に高いスピードで走るため、より安定したステアリングの利点を大きく受けることになる。この場合の長め、を数字にすると、だいたい100〜120mmとなる。さらに長い数字、となると130mm以上となるだろうか。そして90mm以下のステムは、短いステムであると考えていいだろう。
スポーツバイク全体として考えると、ステム長がバイクの走りに及ぼす影響というのは小さなものだ。ほとんどのライダーは、そのステム長が自分のリーチの範囲にある限り、それに簡単に順応してしまうからだ。しかしながらステム長は、ライダーの求めるハンドリングとステアリングを確かに(あるいは完璧に)調整できるものであると言って、全く差し支えないのは事実である。
===============
なるほどねー。難しいマターなんだねー。