2015-03-18

『MTBエンデューロ』の、絶対オススメできない遊び方


 なんだかんだ言ったところで、スポーツ自転車を目一杯楽しく、安全に走らせられるのは、レース・イベントである。

photo: (C) Ryuta Iwasaki

 完全にクローズドされた、安全に気を払われたレースコースは、路地脇から突然子犬やママチャリ特攻隊が飛び出してくる危険なく走れる空間だ。ここを自分の持てる技術を存分に使って走れるレース・イベントという状況は、通勤を含めたフリーライディングでは味わえないフリータイムである。

 歯磨きしてるときと同じぐらい、存分に宇宙意志と交信できる唯一の瞬間と言ってもいい。

photo: (C) Ryuta Iwasaki


 昨今、マウンテンバイクのシーンで大きな話題になっているのが、「エンデューロ」と呼ばれる新たなレース形態だ。

 人気すぎて、今年からUCI(国際自転車競技連合)のレースとしても採用された、今後の新たな潮流となりそうなマウンテンバイク・レースイベントである。

photo: (C) Ryuta Iwasaki

 これは1日に何本かのダウンヒルコースを走って、その合計タイムを競うという基本ルール。各ダウンヒルを「SS=スペシャルステージ」と呼び、それぞれのSSのスタートタイムは、それぞれのライダーごとに割り当てられている。

photo: (C) Ryuta Iwasaki

そのスタート時間までにスタートにたどり着くのも、レースの一部である。各自のスタート時間に遅れると、失格、あるいはペナルティタイムが加算される。


photo: (C) Ryuta Iwasaki

 なので、例えば第1SSのゴールから第2SSのスタートまで時間が短く距離が長かった場合、その間の区間=リエゾンも、目一杯のスピードで走らなきゃいけない。

欧州北米のプロ級レースだと、リエゾンの距離は長くてスタートまでの時間は短いようで、休んでる暇ないぐらいぶっ飛ばすらしい。




 去年は、日本でも2回、このエンデューロが開催され、楽しそうなので両方とも参加してみた。その一つの参加の模様はこちら。《日本初開催!FOX Cannondale 乗鞍エンデューロ》 http://www.cyclesports.jp/articles/detail.php?id=576 超楽しかった。



 案の定、好評だったようで、今年は、さらに回数を増やして開催されるようである。その代表的なのがENS、エンデューロ・ナショナル・シリーズという、勝手にナショナルの名を銘打った(?!)シリーズ戦だ。

内嶋亮という元HONDAレーシングのレジェンド・ダウンヒルライダーが運営するこのシリーズは、走りの楽しさを存分に味わえるものだと、僕は確信している。なので、もし今年、このエンデューロに参加を目論んでいるあなたがそこにいるのであれば、ぜひ、このENS参加を検討してみてほしい。http://ens.dynoco.jp/




 さて、そのエンデューロ・レースイベントへの参加に関し、絶対に誰にもオススメしない、ハンパじゃない楽しい遊び方がある。

 それは、初見でエンデューロレースを走ること。すなわちコースの下見や練習走行をすることなく、決勝レースを走ることである。




 コースの下見なしでなんて、絶対にレースを走んないでください! ってみんな言うかもしんない。まあそれはそれだ。

 そもそも、一般参加者が走るのを前提としたコースが、安全でないわけがない。それに誰しもが、試走の一本目は初見での走りになる。

 その全く一本目のタイムを計りたいという判断をこちらがしただけの話だ。




 でだ。なぜ初見がいいのかというと、僕はマウンテンバイカーだからだ。

マウンテンバイカーが、実際の山を走るときには、その走るトレールを何度も走って知り尽くしているわけではない。

というより、日々状況が変わる実際のトレールでは、毎回の走りは、現実的にほぼ初見であるという覚悟を持っておくほうが、転ぶ可能性は少ない。





 マウンテンバイキングとはすなわち、トレールではできるだけ転ばない、絶対に怪我しないことと同意語だ。その信念を持っている僕は、自分のライン選びと判断に責任を持って走っている。

 毎回のライドの中で、転ばないように、且つその制約の中でどこまで自由に走れるか。そんな真剣な遊びを楽しんでいる。





 コース初見の走りであれば、その責任を持った真剣な遊び、すなわちマウンテンバイカーとしての、真の実力を「見える化」できる。タイムという数字、順位という数字として、マウンテンバイカーとしての真の力を試されていると思い込める。コースを走り込んだレーサーとはどれぐらい違うのか、も確かめられる。




正直言えば、俺なら、いくら練習して走り込んだところで、タイムも順位もそんなに変わんない。これまでの経験でよく知っている。であれば、他の人もそうではないのか。


photo: (C) Ryuta Iwasaki


 ファースト・エクスペリエンス・イズ・ザ・ベスト・エクスペリエンス。何ごとも最初の体験は、半端じゃないアガる。だからこその、初見でのライドだ。こいつはまったくもって、絶対にオススメできない。

ただ同じ遊びをする仲間がいるならできれば、会場で僕を見かけたら「なんと私も初見よ♥」とささやいてほしい。リアルマウンテンバイカーとしての実力を互いにタイムで確かめ合いつつ、ケがないぃちんち、を楽しもう。