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2013年マウンテンバイク全日本選手権ダウンヒル

 2013年マウンテンバイク全日本ダウンヒル、レースシーンは全然好きじゃないのに見に行ってきた。ここんとこ、まれに見る斬新なレースだったからだ。理由がいくつかある。

1)富士見じゃない。

 ここんところもう数年、全日本と言えば富士見だった。大人の事情はいろいろあったんだろうが、まあおそらく運営側の怠慢だ。これにつきる。

2)コースオープンが限られていた

この初めての特設コースというのがよかった。基本的にみんなイコールコンディション、90年代の世界戦やワールドカップなどと一緒、ローカルが強いレースではなく、誰も走ったことのない、その場本番の公平なコースだ。

 しかも、試走できるコースオープンの時間が極端に限られていた。本気なライダーじゃなきゃ走り込めないという姿勢もよかった。

3)ジャンプが多いコースだった

 試走の前にコースはネットで公開された。カメラを付けて走った映像が公式ウェブに上がったのだ。これを見るとだ、かなりジャンプやドロップオフなど、重力フロウが活かされたコースで、なにこれ気持ち良さそうじゃん、と思わせたのが勝利のカギだった。うむ、これは見に行かなきゃ、と思った。


 まあ東京5時起床で、9時前に会場の伊豆修善寺サイクルスポーツセンターにいられたのは大変ありがたかった。三島まで新幹線に乗れたのも特急好きにはステキだった。しかしコースは遠かった。ベースとなる駐車場から実際のレースコースまで、デカい谷を超えるか、クルマで移動するかでないと、ライダーが走るコースに近づくことすらできなかった。ゴールエリアも極端に狭かった。これは残念だった。

 しかし、やはり斬新なだけあってなかなかに刺激的&魅力的で、これだけ見応えのあるダウンヒルコースだったら、また見に来てもいいかと思った。

ビデオ通りにコースはジャンプだらけで、まあみごとに飛びまくり。タイトコーナーは超インをドロップしながら真っすぐに。ゴール前にはなんと、川を超えるリバージャンプすらあったのだ。しかもちょいと斜めってて、スタイル入れられるらしい。見どころだらけで、山の中に遠く隠されてしまっていたのが本当に残念なショーコースである。予選の走りでは、今年大復活の大ベテラン、安達靖が2分フラットのトップタイムをゲット。やっぱ自転車は生涯スポーツですよ。

 レースディレクターの内嶋亮くんに聞いたら、このコースのベースはNIPPOさんが造ってくれたんだと言う。それにダウンヒル選手会が口を出し、よりリファインしたとのことである。NIPPOというのはたぶんロードのチームだと思うのだが、そんな人々が「ジャンプとかいっぱい見たいじゃないすカ」とかいってユンボばんばん使ってジャンプと重力フロウを作ってくれたのを思うと、ロードの人もだんだんワカってきたじゃん、と頭が下がる。

 今んとこ一番速い巨匠安達くんでも2分と短いのがいい。レースとしてはよくわからんが、ショートでポップなコースは見ていて楽しい。たぶんライダーが楽しく走っているからだ、疲れる前に。6mのテーブルと、着地がヌタッてる10mのテーブルを飛んだ後に、全長10mのドロップを落ちてそのまま、タダシの父ちゃんことジッちゃんの言う「天空ドロップ」へと向かう。ここがステキだ。ドロップの前で一瞬現れる舗装路の先には、青空が見える。ドロップとはつまりガケである。ここを普通は、できる限り飛ばないようにガケに張り付いて、スムーズに落ち抜けるというのが正攻法だ。

ところがこのガケの途中に、もう一つボコンという出っ張りがある。そのでっぱりが、あれだ。上から見ると、バックサイドに見えてしまうのだ。ドロップを踏み切って、そのバックサイドに向かって飛び込む。そうだな、いわゆる飛ぶということだ。言葉だともどかしいのでこれを見てくれ。



 このドロップを天空に舞ったのは、ビデオの九島賛太、井本ハジメ、九島ユウキ、黒沢大介ほか。世界を走るライダーズは、この現在の世界レベルのエアを普通に飛んでいく。しかしてこれを飛ぶのが速いかと言うと、結局飛ばずに、滑らかにこなした井手川直樹が、もう念願の7年ぐらいぶりの全日本チャンピオン。ライダー全てがイコールコンディションであれば、そのコースへの対応力、観察力、そして加速力に最も優れるライダー、すなわちレーサーが勝つ。レーサーとして最高のコンディションを常に整えている直樹が勝利したのは、しごく単純な証明である。

 残念だったのは、いわばニュースクールの旗頭ハジメちゃん。ジャンプだらけの全日本選、きたこれ今でしょばかりに期待された予選で、飛び慣れたまさにここでしょ、のドロップでちょっと飛び過ぎたか、なんとオーバーランしてコースアウト。コース脇にバリバリ生えているとっげとげの草にちっくちくにやられたあげくに、無念の予選不通過。また一つ伝説を作ったという見方もできる2013年のハジメちゃんぷであった。

 世界に通用することを目指し、標高差150mという限られた空間の中で作られた、全日本選手権用のダウンヒルコース。後にアジア戦の開催も見越してのコースビルドだったというだけのことはあって、天空ドロップ下の左バームを巨大にするとか、スタート直後の無意味なシングルジャンプをテーブルにするとかにすれば、もっと気持ちよく走れるコースになる。しかしこのコースが常設化するかどうかは、誰も知らない。


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2013年マウンテンバイク全日本選手権ダウンヒル



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