とかくフレームの素材がどうしたこうしたと語られる昨今ではあるが、まあアレだね。結局は自転車の走りなんて、ホイール径とタイヤのエアボリュームがおおかたなわけだから、ママチャリ、あるいは26インチ×2インチ程度の小さいホイールしか乗ったことない人が、舗装路バイクに使われる700Cサイズを履けば、羽が生えたかのように感じるのは当たり前。なので、フルサスバイクに700cホイールを履かせれば、これはもう街中じゃ無敵ですよ無敵。
ジャマするものは段差だろうがゴミだろうが飛び越えるし、タイヤは30Cぐらいと太めだから、路肩のアミアミ側溝も怖くない。フロントサス固めてリアサス柔らかく、後ろが軽くボトムアウトするぐらいにして乗れば、これはもうリア加重のカーヴィングマシン。パウダー・スノーボーディングあるいはサーフィンで後ろを踏みこんでRを作ってグイーンて曲がって伸びるあの感覚を自転車でもどうぞ、てなるわけで、そのくせ、座って漕げば羽が生えるし、危険な時にはディスクブレーキでズバッとジャックナイフして止まる。スキッドして180度なんて止まり方でもオシャレである。
そんな無敵っぷりを友だちに自慢しながら走ってた矢先にパンクした。しかも銀座のど真ん中、二度も。
マニュアルして縁石にリアタイヤを当ててその反動で飛んでイエーイ、みたいなことばかりしてた結果が、まったく見事なスネークバイト。自分が700Cタイヤを履いてたことを、パンクしてから思い出す。持ってた予備チューブに交換してヒコヒコ空気を入れ、さあ乗るぞとホイールをフレームに戻したとたんズバン! バーストした。
チューブがタイヤにかみ込んだまま空気を入れちまったようだ。まさに初歩中初歩のミス。生涯2度目のバーストだ。初めてのバーストのときもそうだった。友だちのパンクを直してあげて、ほらスゲエだろとエバった瞬間に爆発した。都心繁華街近くの住宅地だったため、ご近所中に窓からのぞかれた。ビデオ持ってでてきたヤツもいた。
予備チューブはあっても、パンク修理キットはない。ライディングをなめてかかると、こうなるのだ。備えよ常に。現場が銀座東急ハンズの近くであったことにちょびっと感謝しながら、銀座マロニエゲートのオープンと同時にハンズに突撃。その日最初のお客さんとなって、パナレーサーのイージーパッチ・キットを買う。これは張るだけのパッチだから、持ち歩きもジャマにならないし手軽でいいんだよね。
銀座オシャレゲートのバックストリートに座り込み、スネークバイトの修理を始める。パッチを張って、タイヤに入れて。バーストした方のチューブは、さっきまで新品だったのに、縦にすっぱり裂けてしまっておだぶつだ。なまんだぶ。
派手なカスクに真っ赤なグローブというあからさまに自転車な男が、なんだかよくわかんない自転車のそばに座り、パンクを直しているという銀座ど真ん中午前中の光景。これはもう写真に撮ったらいい絵になるだろうに、と被写体気分で作業を進めるのだが、午前11時の銀座はそんなのまったく興味なし。とか考えてる間に、滞りなく作業は終わる。名作写真の被写体になり損ねた男、それでも懲りずに縁石ジャンプを繰り返し、銀座を去る。