スキップしてメイン コンテンツに移動

行われるべき正しいこと

 先日、というより昨年、とある仕事でゲイリー・フィッシャー氏に会いました。


 雑誌の巻頭インタビューだったのですが、いやあ、おもしろい人でした。さすがマウンテンバイクで大成功したミリオネアだけあって、まず

*しゃべりが面白い。
 しゃべり方、というか、言葉の文章(?)構成、音として流れるときのリズム作りが最高に楽しい。取材気分でしゃべらせモードにして放っておくと、ついインタビューアーではなく地の自分が話に引き込まれていく感じ。

*話題豊富。
経験豊富なのか頭がいいのか天性なのか、話題が次から次へと出てくる。それがまたいちいち楽しくて興味深い聞いたことない情報。

*自転車活動家。
 自身の造ったブランドを売っぱらって、今や《マウンテンバイクの父》業が本職の彼はまた、一人の自転車活動家である。曰く。

「これまでさ、自転車で活動を起こそうとする人たちは、自転車が好きなだけだった。『こんなにすばらしい自転車を広めたいからやっているんだ/お金じゃない』。
 違う違う、そうじゃない。大きなお金がかかることをしなくちゃだめなんだ。こんな感じ。
『お? 自転車専用道路を造るのかい? そいつはエコでいいねえ、でもお金がかかるねえ。そうそう、オレの知り合いにイイ建築業者がいるんだけど』
 お金が動けば、人は動く。だから、これから自転車に関する活動をするなら、ケチっちゃだめだ。やるんなら、大きくだ」

 活動家と言えば、わりと尊敬し、目指していた活動家アニータ・ロディック(ザ・ボディショップ創業者)が昨年亡くなって、ちょっとがっかりした。世界に目覚めてもらうことを夢見る活動家って、果たして今、どれだけいるんだろう?

 ちなみに彼がこの後自慢げに続けた『自転車専用チューブ道路』の話は、すでにトロントで実現を検討? しているプロジェクトのそのまんまでした。ただ、さすがだなと思ったのは、それに続いたこの話。
「このチューブはさ、いろんなビルを通るんだ。ビルの中にはチューブに直結するドアがあって、そのドアがある建物は、不動産的にも価値が上がる、と。どうだい、そんなのは」
 ゲイリー・フィッシャー、還暦ちょっと前。老獪も前にして既に狡猾。

 最後に、彼が数ヶ月まえに、BC州バンクーバーの自転車フリーペーパー『モメンタム(Momentum)』に語ったインタビューの中から、最も印象的だった一文を引いてみましょう。

『Bike people get used to that, not fitting in,
 being the outcast and doing what they do
 because it's the right thing to do』

自転車な人々が、迎合せず、
孤独にさらされながらも、
行動するのに慣れているのは
それが、行われるべき正しいことだから。

 他にもむちゃくちゃ面白い彼の思想をしっかりと叩き込まれたのですが、なにせ600文字しか書けなかったため、それを充分に印刷できなかったのが残念。ですが、まあこれを書いてすっきりしたって感じ。そのうち、ボクが自分の意見であるかのように何食わぬ顔して書くかもなので、そのへんご注意を。

 そいえば、このインタビューの直前、フィッシャーが泊まっていたホテルに同じく宿泊していたサンフランシスコ(正確にはバークレー)在住の自転車通、シモムラタクミ氏とフィッシャーが朝食時にばったり遭遇。かなり面白い話で盛り上がった、とのちにシモムラ氏より聞きました。その場にいたかったなあ。そういうの逃す間の悪さがボクの持ち味です。

このブログの人気の投稿

和訳『ステムの長さは、どのように自転車のステアリングとハンドリングに影響するのだろう?』

『ステムの長さは、どのように自転車のステアリングとハンドリングに影響するのだろう?』 という記事があった。これだ。 "How does stem length affect a bike’s steering and handling?" by Matt Wikstrom http://cyclingtips.com/2015/03/how-does-stem-length-affect-a-bikes-steering-and-handling/ 2015年3月30日に公開されたこの記事には、以下のようなことが書かれていました。ご参考までに。

すべての庭にパンプトラックを (翻訳)

  (この文章は、米国の雑誌『マウンテンバイク アクション』2010年8月号の記事を、原文にほぼ忠実に、日本語に訳したものである。「すべての庭に、パンプトラックを」その想いを、英語が読めず日本語が読める方々にも伝えたく、広めたく、翻訳を行い、公開している) 『すべての庭にパンプトラックを 』 ●土の山は、プールよりすばらしくなるのか? 間違ったスタートと、グズグズと何年も無駄な時間を過ごした後、MBAのパンプトラックは、ついに完成した。世界チャンピオンの専門技術と寛大さ、2400ドルの現金、18 X 18 mのバックヤード、そして合計40時間の手作業により、土の山は、乗りやすく永続的なパンプトラックとして生まれ変わった。このMBAパンプトラック誕生秘話は、あなたにもパンプトラックが必要かを判断するためと(もちろん必要だ)、それを作るために必要になることだろう。 【基本】----------------  パンプトラックとは、ペダルをこぐことなく周回できるダートトラックのことだ。ライダーは、ローラー(こぶ)とバーム(丸く角度の付いたコーナーの壁)を使って、「パンプ」してペダルをこがずに加速することができる。  このコブを乗り越えるときに、自転車を引き、そして押すことで、スピードを得る。コブにさしかかったときにハンドルを引き、コブを越えるときに、ペダルを押す。ダンスのようなものだ。全ては腰の動き次第である。  バームには、低い姿勢で進入する。そして遠心力が体をバームに向かって押し付けようとするときに、その力を脚で押し返し、加速するという物理学である。強い力(と適切なタイミング)で押すことにより、さらに加速することができる。コーナーの出口ではその加速をさらに増すため、できるかぎり強く押すことになるわけだ。 【物語】----------------  マルゾッキがカリフォルニア・バレンシアに作った秘密のパンプトラックで乗り、そしてオハイオ・クリーブランドにある《レイズ・インドア・マウンテンバイク パーク》で時間を過ごした後、我々はパンプトラックに完全にハマった。我々はリー・マコーマックが書いた『ウェルカム・トゥ・パンプトラック』の本をつかみ、簡単な三角形のトラックの設計図を地面に描いた。土を運び入れることなく、土を掘り起こしてコブを

『相模湖プレジャーフォレスト MTBコース』へ輪行しなくてはいけなくなったあなたへ。

仮に、あなたが。 最近、関東近郊のマウンテンバイクコースなのに、ものすごく上品で気分の良いフロウをメイクしている、『相模湖プレジャーフォレスト』のMTBコースへ、お気に入りの一台と一緒に輪行していかなくてはならなくなったとする。 そんなとき、タイムラインはどうなるのか、あなたは何時に家を出ると、ここに何時にいられるのか。この間の日曜日に実際試してみた、時間的なフロウをお伝えしよう。