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全日本選手権、コースの模様を電話にて

RRRRRRing! 職場の電話が鳴る。電話番が、ボクの現職である。

「はい、シャノアでーす」

「あ、野口商会のアツタですけど、ステテコパンツの在庫確認をお願いします」

「いつもお世話さまデース。監督が直々に確認しマースです」

「あ、監督、ダブルエントリーお疲れさまです。結局、ダウンヒルマシン、どうなりました?」

「うん、ジギーのヤマカゲくんから日の丸MoreweedMorewoodを託されたので、日本を代表して走るよ。チーム内の公用語は英語だけど」

「あのね監督、先週ね、富士見のレースコース、走ってきたんですよ」

「ああ、HEROから何となく具合聞いた。なんか、すごいハデなコースらしいじゃん」

「ボクもHEROもね、もうかなり凹まされて帰ってきましたよ。転ばずに完走できんのかよ! って感じです」

「うむ、さすが全日本選手権。日の丸神社ダウンヒルの小手調べとしては上出来だ。で、どうなの、新設されてるドロップオフとか」

「あ、あそこは押した方が安全かもです。なんか、段差の高さ自体はモンキーの店にあるテーブルと同じぐらいなんですけど、バックサイドがものすごい急」

「そうか、1990年代後半のワールドカップ、イタリア/ネヴェガルのダウンヒルコースを思い出すな。当時ブリブリのヤングつかちゃんが涙目で降りてきて、何も言わなかったというあの伝説の。で、途中の巨大な岩とかどうなの」

「もちろんデカイのありますよ。ふたつ。迂回ルートどこに作るの、って感じです」

「なるほど。今どきのテレビ映え&写真映えするレーシングコースって感じか。俺たちをスティーブ・ピートかなんかと勘違いしてるな。光栄だ」

「オレ転ばず完走する自信ないですよ。転ばなければ、わりといい順位出るんじゃないの? って感じです」

「そこで、我々レーシングフィーバーの教訓、『禁転倒』が生きてくるわけだ。転倒は絶対禁止だ。服が破けるし」

「で、監督は、いつ富士見入りで?」

「辛抱たまらなくなったら金曜日輪行入りでコソコソ練練も考えてたけど、土曜日の集中力にかけてみることにした。だから、MoreweedMorewoodと4クロス用ジャイアント・パンダの2台と監督を、土曜早朝にクルマで運んでもらえますか?」

「ああ、いいっすよ。ちなみに、ステテコパンツ、カーキのMサイズなんですけど、在庫どうですか?」

「今ならまだご用意できますよー。なんかここに来て、急に売れちゃって、意味わかんない」

「了解です、じゃあ後で発注入れときますんで、よろしくおねがいしマース」

「いつもありがとうございマース。よろしくおねがいしマース」

ガチャン、と電話を切った後ろに、アツタくんの大ボスであるところの野口商会御大、コウイチさんが難しい顔して座っていたことは、アツタくんにはナイショである。

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