ベースギターが楽しい。ギターじゃなくてベースギターだ。どうしていつもこう、メインストリームで判りやすいものを好きになれないのかと本気で悲しくなるが、そういう性質なのだから仕方ないと思うことにしている。
楽器と筋トレは裏切らない。やったらやっただけ結果が出る。ダートジャンプも週2〜3回ぐらいガンバってやって、ぐんぐんうまくなった時期もあった。しかし完全に違うのは、やってもやっても怪我しないところである。1回のボテゴケで生活や人生に支障が出るぐらい怪我するスポーツと違うので、特にうれしい。だから弾きまくり。
一番うれしかったのは、今まで見えなかった音階が見えてきたことだ。これまでドレミは、横一列に並んでいるものだと思っていた。ピアノみたいに。あるいは縦一列。リコーダー(縦笛)みたいに。
が、弦楽器はそうじゃなかった。上下左右にドレミがある。おお! これに気がついた瞬間、第3の目が開いた。なにせ教本も先生も無い独学なので、何かを教えてくれるのはベースギターから出る音のみ。とにかくポロポロと音を出しまくっていれば、どうにかなるのではと思い、続けていたらやっぱりわかってうれしかった。
ダートジャンプでもそうだった。ただひたすらにロール(飛ばずに前輪を上げてジャンプをつぶすこと)ばかりを続けていたら、ある日突然バックサイドへの刺し方とリップの蹴り方、そして力の抜き方のタイミングが一致して、飛べた。入れる力や技術ではなく、押しと抜きのタイミングが大切だったのだ。これと同じ目の開き方だった。
さらにジャンプは、自転車に乗る、ということがどういうことかなのかを教えてくれた。乗ることとは、すなわち自転車を前に転がすことである。重心を押し込むと自転車が勝手に前に進むポイントがあることに気がついた。プッシュやパンプと呼ばれる、ペダルを漕がずに加速するテクニックは、それを使っている。
これに気がついてから、ロードに乗るときですら乗り方が変わった。そのポイントにペダルを踏む力を押し込むよう意識すると、フレームのしなりが生んだペダルを踏んだ力の反力が、前方向に流れてゆき車体を押し進める。これまで以上に車体が走る(ような気がする)のである。
ベースに戻る。縦のドレミがわかると、気持ちいいフレーズは、指が動きやすい位置にある音で構成されていることが多いのがわかった。さすがに百年近くかけて進化した楽器だ。同じく百年近くかけて進化した自転車フレームと同じである。さらに、より気持ちよくするには、うまいことハズすのが大切だというのもわかってきた。
おなじみ+おなじみ+ハズして+おなじみ、みたいなのだ。途中ハズしたときのアレ?感が、次に来るおなじみをより気持ちよくしてくれる。文章構成とも本質は同じなので、とても勉強になる。ボクのだらしなくつまらない文章を、少しでも気持ちよくするためにも、ベースは弾き続けなければならない。