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キャンプだホイ



 ホホホーイ、ウカカカカ、という何の声だかよくわからない鳴き声が止み、ピピピピヤピヤピという鳥の美しいハーモニーが聞こえだしてきた。いまは午前4時。湖だらけの州ウィスコンシンの、どこか国立公園のキャンプ場にいる。

 北米<>日本の時差ぼけが一番辛いと誰しもが言うが、まさにその通り。ビール飲んで飯食って気持ちよくなって、朝まで寝ようとテントに潜り込んで目をつむる。ふと目を覚ますと午前1時。もう寝れない。先のホホホイ節が森のどこかから聞こえてきて、明日も走らなきゃ行けないのになーとか思いながら用足しに出ると、テントの外は草木も眠る丑三つ時。アメリカだし丑三つ時とか言わないし、そんなのいるわけないじゃんとか必死で考えながら、急いで慌ててミョーと用を足す。胸元で眠っている黄色いチビックが、とても頼もしく思える。いざとなったら一緒に戦ってくれるだろうか。

 何をしてるかというと、サルサという自転車ブランドの新車発表会に来ている。なんとキャンプで発表会だそうで、それはそれは面白そうだと、参加することになった。幼少期のアメリカンボーイスカウト、MTBレース野宿参戦にくわえ、野田知佑さんの思想直伝というアウトドア教育を実は受けてきているボクではある。しかしキャンプ実践は久しぶり、なにが必要で、なにが違うのか、という感が鈍ってきてもいる。これを見極めるためにもかなり知恵を絞って装備したつもりだ。

 一番役に立っているのはベースギターである。一人になれるところ以外には絶対にテントを張るなという野田さんの教え第一条に従って、皆とは隔離されたところにテントを張る。他の人々は、個人主義の国アメリカだろうとやっぱりテント村を造ってしまっている。日本人だという言い訳は、先輩でありしごくマトモな日本人フリーランスライターの方も同行参加しているので、通用しない。

 とにかくウケケケケとか聞こえる夜中にたった一人(とチビちゃん)でいると、昨日ついネットで読んでしまった怪談が思い出される。ウフー……。どこかでなにかの遠吠えが聞こえる。そうか! WOLF、ウルフ=狼というのは、その鳴き声がそのまま英語での呼び名になったのか! と真夜中の天才ぶりを発揮した瞬間に、うきょー怖いかも! 恐怖が絶頂に達する。

 そのとき! 隣に眠るベースくんをボロロンとかきならす。と、なぜだか心強くなる。そのままベースを握りしめ、ドレミファソラシドシラシソドソミソとこれしか弾けないフレーズを弾き出すと、指と心が暖まってくる。しかもスピーカー付きなので、いざとなったら、例えば外でガサガサとかガルルとか聞こえたら、ボリューム最大スイッチオン! ハウリングも気にせず一晩中ファラソファミソファミレレレのレとかしてれば、そのうち朝がくるんじゃないかという寸法。なんとも頼もしい。

 とかやってるうちに、時刻は午前5時。まわりが少し明るくなってきた。朝は、夜が明ける直前こそ美しい。野田さんの教え第2条である。明けてしまうと俗化する。いくつもの雑誌に、自分の言葉のような顔して書いたフレーズだ。怖くなくなってもきたので、散歩してこよう。昼間眠くなったら、走らず昼寝すればいいさ。


 野田さんの教え第3条。朝日をつまみに飲むビールが一番うまい。

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