日本に1日だけ帰ったのは、フィンランドへ共に行った翼モンキー・98sh風来坊を、上写真のウィスラー向け《ジャイアント・レイン》に取り替える必要があったからだ。世界に名だたるバイクパークを走るなら、それなりの翼で臨まなくては、コースを作ってくれた方々に失礼である。
90年代後期、ウィスラーほどではないが、日本にも世界に誇れるダウンヒルコースがあった。通称、日本のカミカゼダウンヒル、長野県岩岳スキー場である。当時、ここで行われていたダウンヒルのシリーズ戦で、圧倒的な勝率を誇っていたマシンがある。カミカゼタロウこと伊田井佐夫氏開発の<サイクルワールド・VRS>だ。速い連中はこれに乗っていた。みなが憧れ、速さを求め乗った。岩岳でとにかくよく見たので、『岩岳カローラ』と呼ばれた。
『ウィスラー・カローラ』と言えば、<Norcoノルコ>である。レンタルバイクがあるからかも知れないが、そこらを見ると、みんな乗っている。バイクパーク向けにピンポイントで開発されたダウンヒルバイクだけあって、すごくビヨビヨできて面白いんだろう。しかしウィスラーの魅力は、パークだけではない。周囲のトレールも、ものすごく面白いのに、ダウンヒルバイクでは、重すぎてもったいない。
それを解決するのが、あるていどビヨビヨして、シャキシャキも前に走れるジャイアント・レインである。ちゃんと吸収して、しかも進むという仮想ピボット<マエストロ>のおかげか、バイクパークもトレールも1台で、飛ばさなければ普通にいける。そのため、ノルコとかCoveコーブとか地元メーカーをのぞいて、自転車を持ってくるツーリストの定番。言わば『ウィスラー・マーチ』である。
ただバイクパークでは、ハンドル幅は680mmぐらいあった方がいい。あと短びのステム。一方トレールでは、ハンドルは広くても620mmにおさえ、ステムも90mmぐらいにした方がいい。ハンドルを引いて漕いだときにフラつかず、木にハンドルがひっかかることもないからだ。適度なセッティングのハンドル+ステムのセットを2種類持っておき、走る状況に合わせ、こまめに変えるのが吉のようである。
バイクパークを走るにあたり、620mmのバーを680mmに変えた。帰りの飛行機での重量も考えると<アンサー・プロテーパー>の685mmが大人の選択であった。100カナダドル。思わぬ出費だった。