十余年ぶりに、欲しいリアサス・マウンテンバイク・フレームに出会った。シアトル発のブランド、Corsair《コルセア》である。
創立してから1年半ほどの、これからのブランドだが、まず気を引くのはその成り立ちストーリー。この《コルセア》の創業者の名前は、ダグ・スチュアート。ダグは、2年ほど前まで、高級軽量自転車パーツブランドとして知られる《FSA》の社長であった。
「話すと長いから簡単に言うと、FSAを辞めたあとに《コルセア》を作ったというわけだ」とダグ。きちんとしたグラヴィティ・レーシング・ブランドを作りたかったそうだ。自分で起こしたブランドが大きくなり海外資本に買われ、そして辞めるというのは、マウンテンバイクの世界ではよく聞く話。数々の伝説が生まれ、再生し、あるいは消えていった。そのうちそんな話をまとめても面白いかもしれない。
『グラヴィティ・レーシング』とは、数あるマウンテンバイク競技の中でも、地球物理の特性である重力、ならびに慣性すなわちモメンタムをメインの動力として使うレースのこと。ダウンヒル、スラローム、スロープスタイルなどがそのトップ種目としてあげられるが、乗り手の意識としては、ダートジャンプ、トレールライド、BMXトラックなどもグラヴィティ・ライディングの範疇に入る。自転車マニア的に言うなら、ペダルを漕ぐコグを回す行為を最小限にするなるだけ漕がない乗り方、となる。
とにかくFSAを退陣したダグは、元ダウンヒル・レーサーのデザイナーと組み《コルセア》を始めた。全体的なスタイリングにはそれぞれ好みがあるだろうが、例えばこの白いスロープスタイル用《ケーニッヒ》のなかで一番惹かれたのは、リアサスペンションの機構である。
いくつかのピボットが、とても美しくまとまっている。しかも、表からはその複雑そうなリンクが一切見えないのが、いいのだ。
だが、いちど動くと、その動きに感服する。まずは動画で確認してほしい。別のモデルだが、基本の動きは一緒だ。リアサスが縮むと、リアホイールの軸が後ろ斜めに伸びるよう、つまりチェーンステー長を伸ばす方向に動く。ダグ曰く「4バーリンクは、リアホイールの軸が上下に動くだけだが、これはホイールベースを延ばす。つまりフロントサスが縮んでホイールベースが縮んだ分だけ、伸びる」
とかく自転車は乗らないとわからないので言及は避けるが、この動きとシステムが美しいことだけは確かだ。しかし、さらに美しいのがフリーライド用《マエルストローム》のフロントチェーンリングにある、内蔵(!)チェーンガード部である。
アズキ色の《クラウン》はダウンヒル用。一見なんの変哲もないダウンヒルマシンに見えるが、フレームの臓物(ゾウモツ)部をよく見ると、そこにはもう1つショックユニットが。走行時に動きすぎないよう通常は7.5インチ長のリアサスをメインに使い、大きく落ちた時などドカン!とボトムアウトしたときに、さらに1.5インチの余裕を持たせておくという、豪華安全装置としての2NDユニットなのだそう。
付け加えるなら、全てのモデルのヘッドアングルは可変式で、2度の幅で変更可能。そのためヘッドパーツはオリジナルとなる。チェーン落ちを防ぐプーリーも付属する。フレームオンリーでは2800ドルあたりを軸に200ドル単位で上下する、まあそれぐらいの価格で販売されている。
「とても洗練された(Sophisticated)フレームですね」とボクはダグに言った。久々に、欲しくなるリアサスフレームに出会った。
文頭に十余年前と書いたが、正確に書いても14年前である。そのフレームは、'94年のラスベガス・ショーで世界に初めてお目見えした《ターナー・バイシクル》であった。当時、リアサスのことなど1つもわからず、それでもとても気を敷かれ欲しくなり、当時作っていた雑誌で大きく取り上げた。その後、ターナーは世界的な人気を博し、今も高性能リアサスブランドとして名作を作り続け、スキモノ諸氏は買うチャンスを虎視眈々と狙っていたりもする。
《コルセア》は、14年ぶりに同じ感触を受けたフレームである。乗りたい、はもちろんだがそれ以上にモノとして持ちたい。ウェブページもよくできている。特にサスペンションの動きをアニメーションで表現したページ作りは秀逸である。これを見る限り、まだ日本には輸入販売代理店がないようだが。
創立してから1年半ほどの、これからのブランドだが、まず気を引くのはその成り立ちストーリー。この《コルセア》の創業者の名前は、ダグ・スチュアート。ダグは、2年ほど前まで、高級軽量自転車パーツブランドとして知られる《FSA》の社長であった。
「話すと長いから簡単に言うと、FSAを辞めたあとに《コルセア》を作ったというわけだ」とダグ。きちんとしたグラヴィティ・レーシング・ブランドを作りたかったそうだ。自分で起こしたブランドが大きくなり海外資本に買われ、そして辞めるというのは、マウンテンバイクの世界ではよく聞く話。数々の伝説が生まれ、再生し、あるいは消えていった。そのうちそんな話をまとめても面白いかもしれない。
『グラヴィティ・レーシング』とは、数あるマウンテンバイク競技の中でも、地球物理の特性である重力、ならびに慣性すなわちモメンタムをメインの動力として使うレースのこと。ダウンヒル、スラローム、スロープスタイルなどがそのトップ種目としてあげられるが、乗り手の意識としては、ダートジャンプ、トレールライド、BMXトラックなどもグラヴィティ・ライディングの範疇に入る。自転車マニア的に言うなら、ペダルを漕ぐコグを回す行為を最小限にするなるだけ漕がない乗り方、となる。
とにかくFSAを退陣したダグは、元ダウンヒル・レーサーのデザイナーと組み《コルセア》を始めた。全体的なスタイリングにはそれぞれ好みがあるだろうが、例えばこの白いスロープスタイル用《ケーニッヒ》のなかで一番惹かれたのは、リアサスペンションの機構である。
いくつかのピボットが、とても美しくまとまっている。しかも、表からはその複雑そうなリンクが一切見えないのが、いいのだ。
だが、いちど動くと、その動きに感服する。まずは動画で確認してほしい。別のモデルだが、基本の動きは一緒だ。リアサスが縮むと、リアホイールの軸が後ろ斜めに伸びるよう、つまりチェーンステー長を伸ばす方向に動く。ダグ曰く「4バーリンクは、リアホイールの軸が上下に動くだけだが、これはホイールベースを延ばす。つまりフロントサスが縮んでホイールベースが縮んだ分だけ、伸びる」
とかく自転車は乗らないとわからないので言及は避けるが、この動きとシステムが美しいことだけは確かだ。しかし、さらに美しいのがフリーライド用《マエルストローム》のフロントチェーンリングにある、内蔵(!)チェーンガード部である。
アズキ色の《クラウン》はダウンヒル用。一見なんの変哲もないダウンヒルマシンに見えるが、フレームの臓物(ゾウモツ)部をよく見ると、そこにはもう1つショックユニットが。走行時に動きすぎないよう通常は7.5インチ長のリアサスをメインに使い、大きく落ちた時などドカン!とボトムアウトしたときに、さらに1.5インチの余裕を持たせておくという、豪華安全装置としての2NDユニットなのだそう。
付け加えるなら、全てのモデルのヘッドアングルは可変式で、2度の幅で変更可能。そのためヘッドパーツはオリジナルとなる。チェーン落ちを防ぐプーリーも付属する。フレームオンリーでは2800ドルあたりを軸に200ドル単位で上下する、まあそれぐらいの価格で販売されている。
「とても洗練された(Sophisticated)フレームですね」とボクはダグに言った。久々に、欲しくなるリアサスフレームに出会った。
文頭に十余年前と書いたが、正確に書いても14年前である。そのフレームは、'94年のラスベガス・ショーで世界に初めてお目見えした《ターナー・バイシクル》であった。当時、リアサスのことなど1つもわからず、それでもとても気を敷かれ欲しくなり、当時作っていた雑誌で大きく取り上げた。その後、ターナーは世界的な人気を博し、今も高性能リアサスブランドとして名作を作り続け、スキモノ諸氏は買うチャンスを虎視眈々と狙っていたりもする。
《コルセア》は、14年ぶりに同じ感触を受けたフレームである。乗りたい、はもちろんだがそれ以上にモノとして持ちたい。ウェブページもよくできている。特にサスペンションの動きをアニメーションで表現したページ作りは秀逸である。これを見る限り、まだ日本には輸入販売代理店がないようだが。